【京都市左京区市議会議員】京都党代表-村山祥栄のブログ-つぶや記

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April

24

2018

■重要■芸術大学移転は是なのか?

芸術大学移転は是なのか?
京都市立芸術大学が京都駅前へ移転する計画がいよいよ本格化する。
本年度は調査、設計費用が計上され、平成32年度から具体的工事に着手される。具体的にはラーメン屋が2軒並んでいることで有名な「たかばし」から鴨川までの一帯が予定地だ。芸大が便利な場所に出来ることは概ね歓迎ムードだが、少し角度を変えて検証してみる必要がある。
移転予定地の京都駅前の崇仁エリアといえば、日本最大の被差別部落という特殊事情もあり、文化施設を作り、その旧同和事業に終止符を打つということは一見いい考えだと見える。しかし、ここは駅前の超希少立地だ。現代の都市計画は、基幹駅を中心に都市が広がる傾向にあり、とりわけ都心回帰で基幹駅周辺の開発は激化の一途だ。それは東京の丸の内を筆頭に名古屋駅前、大阪駅前などを見ればよくわかる。大阪は、最後の究極の公有地、大阪駅北ヤードをどう使うか、都市の命運を握るこの地の在り方を長年研究・検討してきた。駅前立地というのは都市にとって特別な場所なのだ。京都における大阪駅北ヤードに当たるのが、今回芸大移転計画予定地・崇仁地区だ。芸大移転用地は38000㎡。ちなみにうめきたヤードの先行開発であったグランフロントが44000㎡と、ほぼ同規模である。今回の芸大移転は駅前市有地38000㎡を使うという単純な話ではない。京都市が所有する駅前土地はなんと160000㎡にのぼり、文字通り、京都市最大の駅前再開発であり、その中核の一万坪を芸大に使うという話なのだ。大阪でいえば、うめきたヤードに大阪市立大を移転させるようなもので、本当に京都市立芸大でいいのかと問いたい。
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■ 京都駅前という立地
まず、駅前開発という観点で考える上で重要な人の流れについて検証する。
芸大を建設することでどういう人の流れが出来るのだろうか。
京都市立芸大は大学院まで含めて学生数1031人。(29年5月在籍数)この数字のインパクトを知るために、京都の代表的な大学の学生数をご覧頂きたい。
立命館35529人(うち衣笠約1.8万人)
同志社29459人(今出川約2万人)
京都大22698人
龍谷19896人
京都産業大学12996人
精華大学3089人
ノートルダム大学1148人
大学誘致により一定賑わいが生まれたり、人の流れを作るにはざっと1万人規模が必要で、芸大はちょうど北山にあるノートルダム大学と同規模で、その程度の賑わいが増加すると思って頂ければイメージが沸き易い。
これをみるといかに小規模で、少人数の為に稀少な駅前で広大な敷地を用意することが京都市全体を考えたときに妥当な判断か疑わざるを得ない。
そんな希少立地を本当に大学誘致で完結させてしまっていいのかということだ。
土地にはそれぞれ有効な使い方がある。例えば平安神宮周辺の岡崎地域は、文化ゾーンで、もしあのエリアに何かを建造するとすれば、美術館やロームシアターに続くような文化施設になるわけで、いくら必要でも老人福祉施設を作らない。祇園の石畳エリアに企業誘致はしない。その土地その土地で最大のパフォーマンスを出せる使い方をすべきであることは言うまでもない。
そういう意味で、二度と出てこない京都駅前の巨大公有地は稀少中の稀少だ。
例えば、検討がされている路面電車(LRT)の復活が具体化した場合、拠点駅になれる場所は京都駅を除いてどこにあろうか。またその広大な土地の確保が今後出来るだろうか。リニアの京都誘致にしても、この土地の使い方は交渉する上で極めて重要なカードになる。特に鉄道会社にとって駅隣接地というのは特別な意味を持つ。駅前という好立地を生かして商業開発をするのか、観光施設を誘致するのか、人が集えるセントラルパークのようなものをつくるのか、大幅に不足しつつあるオフィススペースを確保するためのオフィスタワーを作るのか、可能性は無限大に広がる。
そういった観点から言えば、サテライトキャンパスが京都駅前にあることは否定しないが、広大な駅前立地の大半を使って芸術大学を誘致することには京都の未来の為に絶対反対である。

■ 適正規模、最良選択の移転なのか?
次に大学立地という観点から検証する。現在の沓掛に芸大が移転する際、梅原猛学長は①交通の便がよい②公害がない③用地が66000㎡以上という三原則を打ち立て、移転地検討がなされた。勧修寺領、伏見浄水場跡など複数候補が上がる中、現在の沓掛へ移転した。当時の新聞などを拝見すると「とにかくスペースが欲しい」というのが一番の課題であり、美術、音楽両学部併せて34000㎡だった。現在の沓掛キャンパスは75000㎡(当初予定。のち68000㎡に)で約二倍に拡大されることに大きな期待が集まった。再び、崇仁へ移転後は38000㎡と半減する。ちなみに今度の移転で敷地面積は国公立系芸大の中では最小規模になる。あれほど用地の広さにこだわったのは何だったのかと感じる。本当に十分な用地が確保されていると言えるのだろうか。
 今回の移転にあたり、なぜ移転なのかという点については、芸大移転整備基本構想に課題として示されている。現状の芸大の課題は、
① 立地条件
② 耐震性
③ バリアフリー対策
④ 施設の狭隘化
と4点示されており、その解決が移転だと言うのだが、立地条件以外は、ことさら移転せずとも現在地の建て替えで十分対応できる。立地条件にしても、社会と幅広い交流が制限されることや展覧会の来場者が伸びず、受験生の志向にマッチしないなどが挙げられている。しかし、それを言ってしまえば、京都の大半の大学は都心回帰しないと成立しないということになる。展覧会については、既に堀川御池にサテライト会場を開設しており、問題は解決している。
議会でも議論をしたが、結局、なぜ移転しなければならないかという理由はない。同和地区の課題解決の為の移転だとしか考えられないのが当局の説明だ。
 この議論にあたって、芸大の自治会を中心に現役学生からヒアリングも実施している。一定学生にとっては歓迎ムードであるが、都会の喧騒の中での創作活動がうまくできるか不安を抱いている学生が多いことと、とりわけキャンパスが縮小することに不安を抱いている学生は大変多いということも追記しておきたい。

■取り残された西京区
 現状のキャンパスについても触れておかねばならない。広大な敷地を求めて昭和55年、西京区大枝沓掛へ移転した。グラウンドから体育館、学舎、8階建ての新研究棟など2000年に作ったばかりで、これらを一体どうするつもりなのか、全く目星もついていない。芸大が転出した後の大枝地区はどうなるのか。そもそも沓掛は団地開発をする約束で地元の地主に土地の売却を持ちかけた。しかし、建設計画が頓挫すると買収した土地を人知れず一部を関電に売却し、一方的に残りを芸大にすると決めた。たびたび地元無視だと地元は反発したが、芸大移転が決まると気持ちを切り替え、学生向けのマンション建設などに沸いた。大枝にとっては、学生が増え、人の流れが出来、地元も歓迎ムードになった。しかし、今、再び以前以上に悪い状態に戻ろうとしている。同志社の今出川キャンパス回帰がいい例だ。同志社の今出川回帰によって京田辺市は閑古鳥が鳴き、地元は悲鳴を上げている。同じことが西京区で発生する。住民にどう説明するのか。次の方向性も示さずただ移転するというのだから、西京区全学区の自治連会長名で移転反対が叫ばれたのも当然だ。都市の大計の為には犠牲はつきものかもしれないが、沓掛については余りに行政に振り回し過ぎの感あり、住民に寄り添う必要もあろうと強く思う。また、まだまだ改修して使える施設に投入した税金はどうなるのか。それでも移転したい理由がどこにあるのだろうか。

■財源問題
最後に問いたいのは、「なぜ今なのか?」という点だ。今年は過去最低の財政難で、必要最低限の投資に留めるべきところ
だが、大型公共工事が目白押し、なんと過去最大の予算編成をしている。老朽化著しい市役所本庁舎、クリーンセンター、美術館、この辺りまでは何とか理解できる。学校統合に伴う新しい学校建設や古い大型コンピューターシステムのオープン化なども再構築によって効率化が発生するので無駄もなくせる部分がある。しかし、平成25年まで予算をかけて改修工事を続けてきた芸大移転を今すぐ実行に移さねばならない理由は特にない。最も古い建物でも築40年未満で、まだまだ使える。建設費250億円についても寄付を募り、残りを税金でとのことだが、これまでの流れを見れば、ほぼ借金で賄われることは間違いない。
ちなみに昭和55年の現在の芸大用地への移転の時、当時も役所の財政は火の車、60億の移転費用の捻出の為に役所は頭を抱えていた経緯がある。元芸大用地の売却費用を充て、それでもなお20億近い不足が生じる為、どうするか、議会は紛糾した。(結果的には21億円分しか売却は出来なかったが)
それが今はどうか。財政難に慣れてしまったのか、全額借金することに役所も疑問を持たず、議会も異論を挟まない。これ自体が異常だと思うべきだ。大体、前回の移転でも総工費50億と試算されていたのが最終82億へ膨れ上がった。役所の工事はいつもそうなる。総工費250億円も全額借金、最終大幅に膨れ上がる可能性は高い。
 加えて言うとこの地は莫大な市税を投入して買収してきた。公示地価(平成29年・京都駅前98万円)を基準に計算するとざっと372億円分にあたる。併せると622億円分の総工費だ。言っておくが、622億あれば、半世紀以上ごみ袋は無料化できる。保育園の完全無償化なら10年分。児童館建設(安井児童館新設工事3600万円)はなんと1884館設置できる。
ちなみに、平成29年度入学者200人のうち市内在住者はたった27名、昨年は38名だ。公立大学の意義は、市民の税金で市民に高度教育を提供するという意味と大学を核にした街づくりをするという二点がある。京都市民の税金は京都市・京都市民にとって最良の再分配を行う必要があるという観点からも、この人数をどう見るか、よく考えるべきだ。
市内在住者は極めて少数、全体で見ても大きな中学校一個分(京都市立神川中学校生徒数1150人)程度の生徒の為に、京都駅前立地一万坪以上を提供し、660億のプロジェクトを進めることが妥当な金額かなのだろうか。
 そして、火急を要さない工事はしばらく先にすべきだ。
 崇仁という歴史的経緯のある場所が芸術のまちに生まれ変わることにほとんどの市民は疑問を抱くことはない。学生にとっても便利な場所への移転に歓迎ムードだ。しかし、その一方でこの事業の実施により失われる都市の機会損失は計り知れない。